
まず「漢化」という言葉自体が私の造語であると思いますので、簡単に「『漢化』とは何か」を説明してから話を進めます。
「漢化」とは、ここでは「中国に住む少数民族(漢族以外の民族)が、自民族の文字を読めず、言語を話せなくなる現象」という意味です。
現在、内モンゴルでは内モンゴル人(内モンゴル自治区在住のモンゴル民族)の漢化が大変な勢いで進んでいます。「内モンゴル」とは言ってもやはり中国、漢族が絶対多数を占めているので街で聞く言葉はほとんどが中国語です。こんな環境にいてはモンゴル語を使う機会は当然少なくなるし、また内モンゴル人と漢族が結婚して子供がいる例はいくつか知っていますが、漢族がモンゴル語を勉強して子供をバイリンガルにする(或いはモンゴル語で教育する)という話は聞いたことがありません。
これはフフホトなどの比較的大きな都市での話なので、田舎に行けばまだまだモンゴル語は残っていますが、モンゴル語の中に中国語がたくさん混じっています(都市・田舎に関係なく)。場所にもよりますが、総じてその程度は日本語中のいわゆる「ヨコ文字」の氾濫など比較になりません。この影響が少ないのは、もはや遊牧民くらいしかいないのではないでしょうか。
さらに、今後田舎から都市に出てくる人は増えこそすれ減ることはないでしょうから「田舎のモンゴル語は安泰」とはとても言える状況ではありません。
しかし、1番大きな原因は他ならぬ内モンゴル人自身にあると思います。
私たちを悩ませるのは、内モンゴル人の両親が子供を中国語で教育しておきながら「自分の子供は内モンゴル人なのにモンゴル語がわからない」と嘆くことです。「じゃ教えれば?」と言うと「忙しくて時間がない」と言いつつ、酒を飲む時間はたくさんあったりします。まったくもって理解できません。
内モンゴル人はプライドの高い民族ですが、このように口先だけの内モンゴル人が多すぎます。民族の最低条件とも言える言葉がわからず、何が「内モンゴル人」でしょう。
彼らの意識が今後も変わらなければ、中国国内のモンゴル民族の将来は絶望的と言わざるを得ません。
田中英和中国語・モンゴル語講師、モリンホールの演奏・講師など。

墓標なき草原(上) 内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録 [単行本]
【寄稿者プロフィール】
田中英和

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