
モンゴル関係者の間で今も語り草になっている、伝説の番組があります。
「世界ウルルン滞在記 モンゴル ラクダを泣かすホーミーに・・・安めぐみが出会った」
(TBS 2006年7月9日)
ここで、衝撃の映像が流れました。

舞台はモンゴル国。グラビアアイドルの安めぐみさんが、モンゴル国立モリンホール交響楽団による、モンゴルの伝統歌唱ホーミーに感動し、ホーミーを習得するべく、モンゴル西部に位置するホブド県のドゥルグンフルン草原にて、ホーミーを教えるマルガッドさんと、奥さんのマグナイさん一家のゲルに滞在するところから始まります。
問題の箇所は、ここからです。
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ナレーター:
モンゴル出身の力士の強さ!実は子どもの時からの育てられ方に秘密がありました。
モンゴル相撲の横綱クラスの力士は、平均7歳までこのことを続けていたという調査結果があります。
それは日本では、幼い頃にやめてしまうこと。お母さんも、今年9月に大学に進学する息子にその育て方を実践しています。町の高校から末っ子のバルト君が帰ってきました。その育て方はモンゴルでは末っ子の特権とされていること。子どもが強く育つように続けているお母さんが多いんです。
安めぐみ:
すごいね!びっくりしちゃった!
ナレーター:
さて、お母さんが末っ子の体を強くするためにやされていることとは、いったい何でしょうか?

ナレーター:
久しぶりに帰ってきた末っ子のバルト君には、お母さんのアレの現物を。
字幕:
さあ おいで
ゲスト:
うわーっ!えーっ!?(驚きの声)
ナレーター:
バルト君は18歳!お母さんは64歳!
安めぐみ:
お母さんのおっぱいはおいしい?
バルト君(字幕):
とっても美味しいよ。お母さんが大好きだからね。

ゲスト:
しかし、これは衝撃映像だな・・・。
字幕:
スフオチルさん(16歳)

ナレーター:
モンゴルでは末っ子の男の子は、家を継ぐ大切な跡取り。
五月場所で優勝した白鵬関も、5人兄弟の末っ子でした。
白鵬関のお母さんタミルさん(字幕):
子供には母乳が一番です
母乳は強い子供を育てます
そして草原の自然が息子を更に強くしました

字幕:
トンガラグさん(14歳)
タワーバルさん(15歳)
ナレーター:
女の子だって、末っ子なら母乳を飲み続けています。
出る量は少なくなってきますが、飲ませ続けている限りは出るんだそうです。
正解は、「母乳を飲ませる」でした!

石坂浩二:
(理解不能のように、腕組みをし首を左右に振る。)
YOU:
衝撃的すぎて。
安めぐみ:
(恥ずかしそうに両手で頬をおさえて笑う。)

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大変に疑問を呈する内容です。
疑問1
「調査結果」によれば「平均7歳まで」と先んじておきながら、母親の母乳を飲んでいるのは、18歳、16歳、14歳、15歳と、明らかに青年であるのは、どう考えても変ではないでしょうか?
疑問2
白鵬関の母親のタミルさんのコメントと、字幕の内容が合っていない可能性があります。
(現在翻訳を確認していますが、「6歳まで」とコメントしているように聴こえます。)
疑問3
私がその後、どのモンゴル人の皆様やモンゴル研究者の方々に質問しても、5〜6歳くらいまでの授乳はあるが、さすがに10歳以上、ましてや14歳、15歳、18歳はありえない、という返答しかなかったのです。
この番組が報道された2006年は、モンゴル国で大モンゴル国建国800周年を記念し、日本も「日本におけるモンゴル年」として、両国を挙げての交流が盛んに行われた、きわめて重要な年でした。そして、モンゴル国の最大の観光シーズンは、7月から8月にかけてです。
つまり、日本とモンゴルの交流の上での重要な時期に、ピンポイントであわせてきた番組なのです。
モンゴル国側からは、モンゴル国立モリンホール交響楽団や、モンゴル国ではブフ(モンゴル相撲)の英雄でもある白鵬関の父親のムンフバット夫妻も正式にお迎えしての、これ以上はない最高レベルの協力がなされています。
しかしこの番組は、まるで白鵬関も18歳くらいまで、母親の母乳を飲んでいたかのような編集がなされたのです。
私は個人的に、この番組の日本国内での映像編集に協力した、モンゴル国の国費留学生と知り合い、話をすることができました。その方いわく、「映像を観てこれはおかしいと思ったが、テレビだしこの位のヤラセはあるだろうから、そのまま翻訳だけすればいい」と思ったのだそうです。
おそらく現在は、大変に後悔されていることだろうと思います。
結局、この番組に対してモンゴル国側からの正式な抗議はなく、モンゴル研究者らも口頭では意を唱えながら、そのまま放置され、現在にいたっています。
モンゴル人は大人になっても母乳を飲む!?
TBSのこの番組の内容は事実なのでしょうか?
それとも、演出だったのでしょうか?
モンゴル国の皆様のご意見を、お待ちしています。
【参考】
フジテレビの『世界行ってみたらホントはこんなトコだった!? 』
「672時間滞在でわかった これがホント!?のモンゴル」
コメント
コメント一覧 (5)
あの年まで母乳飲むなんてありえません。
スキンシップが日本人より多かったり、親子愛が強いと言うのはありますが…。
今でもたまに、あの番組の事を聞かれます。いちいち訂正するのは正直めんどくさいですが、仕方ありませんね(・・;)
テレビの世界は詳しく知りませんが、より面白くしようとしてあんな演出をされたんでしょうね。
大体遅くても7歳までぐらいだと思います。
もちろん、モンゴルと一言で言っても、地域や部族によって違うと思われます。
この取材は偶々その地域のことではなかったと思います。モンゴル民族全体を代表はできないでしょう。
息子は9歳だけど飲ませていると聞いたことがあります。
モンゴル相撲の横綱級力士への調査は何年の物でしょうか。
歴代のモンゴル相撲力士の平均ですよね。
中には40、50年前の横綱もいるでしょうから田舎の食糧事情を考えると
ありえない話ではないと考えられます。
非常に限られた人への調査でしょうから、一般的なモンゴル人というくくりで
取り上げるのは間違いでしょうが、明示されているように思えます。
モンゴル相撲協会に問い合わせればその調査について教えてもらえるのではないでしょうか。
例えば、5人が2歳までで5人が13歳まで飲ませたら平均は7歳なので
両極端な分布だったのかもしれません。平均7歳なのに取り上げるのは18歳はおかしいというのには当たらないと思います。
事実を基にしているけど、演出や編集方針が大げさではないかといったあたりかと