モンゴル料理の代表といえば、ボーズとホーショールです。

写真はモンゴル国の家庭の、日常的な食卓風景です。

mongolianlunch


手前より、
・スーテーツァイ(半発酵茶にミルクを入れ、ひしゃくで数十回、空中攪拌させて作るクリーミーなミルクティ。ほんのり塩味。)
・ホーショール(小麦粉の生地に羊肉と玉ねぎやにらなどの野菜を包み、油で揚げた料理。半月型や丸型がある。)
・ボーズ(小麦粉の生地に羊肉と玉ねぎなどを包み、蒸した料理。丸型や楕円型がある。)
※他に、モンゴル国名産のハムなどもありますが、それはまた、別の機会に。

困ったことに、モンゴル料理のボーズとホーショールは、日本ではことごとく「餃子」と言われます。
ボーズもホーショールも餃子ではありません。モンゴル人も、ボーズやホーショールを餃子と言われることを嫌います。

目隠しをして餃子とボーズとホーショールを食べ比べても、その違いは誰でも分かります。そのくらい違う料理です。

初めて食べる人から、最初の見た目の印象から「餃子」や「肉まん」という言葉が出ることは、まだいいのです。

やめてほしいのは、モンゴルを紹介する立場の人やモンゴルとの交流経験が豊富な人が、ボーズやホーショールを「餃子」と語ることです。これは、モンゴルに対して非常に失礼な行為です。

もしも、ボーズはツァガーンサル(白い月。モンゴルの太陰暦の新年)の時に、ホーショールはナーダム(ブフ、弓、競馬の祭典)の時に食べる特別な食べ物でもあることなどを知っていて、それでもなお「餃子」と語るなら、その人は文化紹介とは何かを考え直した方がいいのではないかと思います。

モンゴル人が経営するモンゴル料理店やモンゴル人によるモンゴル料理の紹介の現場でも、「餃子」と語られたり書かれたりすることがあります。そのことについて質問すると、モンゴル人はたいてい、こう回答します。

「日本人はボーズやホーショールと言っても分からないです。餃子と言わなければ、理解してくれません。」

これは、あまりにも悲しいことです。

モンゴルを紹介するテレビ番組では、「ボーズは手で食べるのがモンゴル流!」から始まり(ウランバートルでも牧民のゲルでも、ボーズは箸やフォークで食べます)、ボーズは餃子ではないと力説するモンゴル人女性のコメントの直後、「ボーズはやっぱり蒸し餃子だった」と報道するという、きわめて悪質な印象操作が行われました。

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これはまさに、日本人の悪さをそのまま反映していると思います。

文化的な話題になれば、ボーズは中国語の「包子」(バオズ。生地の中にあんを入れた料理の総称)と語源が同じですし、ボーズもホーショールも中国と関係の深い料理です。地図を見れば、モンゴルと中国は完全に隣接していますし、もともと牧畜文化と小麦文化の交流の中で生まれた料理です。また、モンゴルには水餃子とほぼ同じバンシがあり、モンゴル国にはスーテーツァイにバンシを入れた「バンシタイ・ツァイ」という料理もあります。

他に、蒸したてのボーズは噛むと肉汁が口いっぱいにあふれます。そのことからボーズは「モンゴルの小籠包」と呼ばれる時もままあります。しかし、小籠包はスープの煮こごりを包んで蒸す料理です。ボーズと小籠包は似て非なる料理です。

ボーズもホーショールも大変に美味しい料理ですし、多分モンゴル人にとっては「モンゴル人に生まれてよかった!」と思う味でしょう。だからこそ、紹介するときも大切にしていきたいと思います。

とにかく、その美味しさは食べてもらえばわかるのですから!

・・・書いてて食べたくなりました。ボーズとホーショール。

2011年10月25日
みずばしょう
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