日馬富士夫妻
【写真】日馬富士さんと妻のバトトールさん=2022年10月31日、ウランバートル市の新モンゴル日馬富士学園理事長室

 2018年9月、ウランバートル市に、小中高一貫教育を行う新モンゴル日馬富士学校を開校させた元横綱の日馬富士さん(本名・ビャンバドルジ)が、このほど、家族そろってモンゴルに帰国した。妻のバトトールさんは、9月、学校職員になった。夫婦で学校経営に本格的に取り組んでいる。

 日馬富士さんは、これまで、東京からモンゴルに通っていた。子ども4人のうち、小学校6年生の長女は、来春の卒業まで東京に残るが、残る3人の子と夫婦は、今年7月、ウランバートルに引っ越した。

 妻のバトトールさんは、学校のマネジメント担当マネージャーとして、国際交流、人事、IT、図書館の運営にかかわる。日馬富士さんと共同で経営に当たる新モンゴル学園のガルバドラッハ理事長は「正職員として採用した。しっかり仕事をしてもらう」と話している。

 バトトールさんは、新モンゴル高校と岩手大学を卒業している。横綱との結婚披露宴のとき、ガルバドラッハさんは、新婦側の主賓として出席した。

 日馬富士さんは、以前から、祖国の人材を育成する学校を創設したいと考えており、妻の恩師に相談。恩師は、横綱の熱意に賛同し、東京にいる日馬富士さんに代わって、学校創設の手続き、教職員や生徒の募集など実務を担い、自ら校長を引き受けた。

 ガルバドラッハさんは、今年8月いっぱいで校長を退いた。これまで副校長(第二校長)を務めていたウルジーサイハンさんが校長になった。

 9月26日、学校の一角に、新モンゴル日馬富士幼稚園が開園した。3歳、4歳、5歳の子を受け入れ、2クラスずつ、110人が在籍している。

 日馬富士学校は、小学校5学年、中学校4学年、高校3学年の12年制。生徒は、49クラス、1540人。開校して5年目だが、モンゴル有数の私立学校に成長した。

 学校は、ウランバートル市の中心部と新空港を結ぶ幹線道路沿いに位置している。一帯は、新興住宅地として発展しており、新しい市街地を形成しつつある。

 そんな場所に日馬富士学校はある。私が見る限り、たぶんモンゴルで一番立派な校舎だと思う。学校の地下には部活用の相撲場もある。しかし、進学校であるせいか、相撲の人気はいまいちだという。日馬富士さんは「まず小学生から相撲の良さを教えたい。マナー、礼儀など相撲を通して学ぶことは多い」と言う。

日馬富士さんは、また「日本の教育のいいところを取り入れ、人間性豊かな人材を育てたい」と力を込める。

バトトールさんは「私が経営者だなんて…。チームの一人として動くだけです」と控えめだ。しかし、私は、彼女は本来、明るく社交的なタイプだと思っている。これまで、専業主婦として家庭を支えてきた。これからは、一歩前に進めて、夫と二人三脚で学校経営に携わってほしいと思う。


▽森修 もり・しゅう 

1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。
このエントリーをはてなブックマークに追加