※当記事の発表後、ナザレンコ・アンドリーさん本人より訂正のツイートをいただきました。本人の誠意と名誉のために、ここに控えます。
※モンゴル情報クローズアップ!編集長のタケシ@Morinhoor さんからも、ナザレンコさんの訂正・謝罪を受けて抗議を終了するとtwitter上で発表がありましたので、ここに追記します。

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2022年11月5日、保守系言論人として知名度のある在日ウクライナ人のナザレンコ・アンドリー氏が衝撃的な発言をTwitterで発信しました。

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ロシアとは、キーウ公国(ウクライナ)がモンゴル帝国にレイプされたことによって生まれた国。だから見た目だけは欧州っぽいけど、精神はチンギス・カンの覇権主義•世界征服主義そのもの。民主主義国家との共通価値観は何一つもない。
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これについて、モンゴル情報クローズアップ!のタケシ編集長(Twitterではミスターモンゴル)が抗議しました。

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ウクライナを支持してたが、この侮辱的に発言は許せない。みんな通報して。
ロシアとの戦争にモンゴルを弾むんじゃない。
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ナザレンコ・アンドリー氏はこの抗議に反論しました。
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具体的に何が間違ってますか?当時のモンゴル帝国はキーウ公国に侵攻し属国にしたのは事実ではない?チンギス・ハーンが世界征服を夢見てたのは間違い?

別に今のモンゴル人にその責任は何一つもないし、非も何もない。でも史実は史実。タタールの軛がロシアに重大な影響与えたことを否定しようがない
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具体的に言うと、キーウ公国がモンゴル帝国に滅ぼされたから、キーウが東欧の主要国家じゃなくなり、すぐにモンゴル帝国の属国になることを認めたモスクワが最も力を持った国になった。そしてモンゴル帝国が弱化した後、露が旧モンゴル帝国領土をどんどん占領し国土を広げた
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なぜ、このような発言を?
現在、ウクライナはロシアによる軍事侵攻を受けて以来戦闘状態が長期化し、世界的にも予断を許さない状況にあります。
おそらく上のツイートは、ロシアのプーチン大統領による「ウクライナは国ですらない」というプロパガンダへの対抗として、あくまでロシア人に向けての皮肉として発信したのではないかと思います。

ウクライナ、ロシア、ベラルーシからすれば、13世紀前半からのモンゴルによるキーウ・ルーシ侵攻とその崩壊、さらに約2世紀半にわたる統治の歴史は、「タタールのくびき」というロシア史の概念をもって負の感情で深く認識されています。

しかし。
・モンゴル帝国にレイプされたことによって生まれた国。
・精神はチンギス・カンの覇権主義•世界征服主義そのもの。
・民主主義国家との共通価値観は何一つもない。


この発言はあまりにも憎悪表現がひどすぎます。

実際、モンゴル侵攻において破壊行為が行われたのは開城勧告に応じなかった町だけで、ほとんどのルーシ緒都市は無傷でしたし、戦後の町の復旧も速やかに行われています。

また、モンゴルによる統治は、ルーシに限らず必要最小限の徴税と軍の駐屯によるもので、言語や宗教といった民族の根幹に対する干渉はありませんでした。洋の東西をつなぐ交易ルートと伝令による迅速な情報網こそがモンゴルの統治の本質であり、現在の国連に代表される国際関係の構築でした。

実際、日本もモンゴルと後に元寇と呼ばれる大規模な防衛戦を行った歴史がありますが、その後のモンゴルとの交易(日元貿易)は活発に行われています。

こうしたモンゴル研究において日本は世界をリードしており、プロパガンダとしてのモンゴルへの侮辱は通用しません。

「モンゴル帝国によりレイプされた」はあまりにも感情的な侮辱です。かつてダウン症候群がモンゴル人の遺伝子をもって生まれたモンゴル病(Mongolism)と表記され続けていたのを、モンゴル人民共和国の代表がWHOに対して強く抗議した歴史をも想起させます。

また、モンゴル人に対してチンギス・ハーンを侮辱することは、あえてモンゴル人の言葉をお借りするなら日本人に対して天皇皇室を侮辱する以上に取られるので、キーウ・ルーシの血をつなぐ方だとしてもあまりにも言い過ぎであることを申し添えます。このような侮辱や憎悪の連鎖には、何一つの意味もありません。

私(みずばしょう)からはナザレンコさんに対して、先述のツイートがもしモンゴルへの侮辱ではなくあくまでプーチン政権下のロシアのプロパガンダへの皮肉だったのなら、その旨を自ら説明され、あらためてモンゴル人への侮辱につながっているツイートへの適切な対処を切に望みます。

モンゴル情報クローズアップ!編集長のタケシさんは、Twitterではロシア軍の最前線に多くのモンゴル系民族が徴用されていることに、人一倍心を痛めています。

また、ロシアのウクライナ侵攻は国際的な人権問題やジェノサイドに直結する問題でもあることから、現在、日本国内では南モンゴル、ウイグル、チベット、台湾、香港などに対する中国の横暴を止めるよう求める人々と、在日ウクライナ人の皆様との協力関係が結ばれようとしている大事な時期にあります。

このことは私よりもナザレンコさんの方が、はるかにお詳しいことかと思います。

あくまでモンゴル人を侮辱する立場を取られ続けた場合、ロシアとウクライナの交戦状態の現在、極めて繊細な調整に心血を注いでいるモンゴル国や、ウクライナを応援する在日モンゴル人の皆様の感情も悪化しかねず、私(みずばしょう)は心配し心を痛めています。

ナザレンコさんの一言一言は、ウクライナ人の代表としての「公」を背負っていること、日本とウクライナの「絆」に直結していることを、どうか今一度御自覚ください。

2022年11月6日 みずばしょう


参照Web:
「ウクライナは国ですらない」「キエフはロシアの都市の母」プーチンは本気で侵攻するか
シュロモ・ベンアミ 2022.02.11
Newsweek日本版

"ロシアの中のアジア"と戦争
NHK(2022.09.06)動画あり


【動画】ロシア少数民族がウクライナに集中的動員され戦死者も
NHK(2022.10.13) 




プーチンの戦争
ナザレンコ・アンドリー
ワック
2022-04-29

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