TDBリースのエルデネオチロ
【写真】TDBリースの機材が使われているモンゴル最大の石炭鉱山「タバントルゴイ」を視察する信州大卒のエルデネオチロさん茲氾豕国際大卒のオユカさん=TDBリース提供


 ウランバートルを拠点にリース事業を展開する「TDBリース」で信州大学経法学部を卒業したモンゴル人、エルデネオチロさんが働いている。彼は、このほど、研修のため日本のリース会社に出向した。この機会をとらえ、モンゴルにおけるリース事業の現状と課題について解説してもらった。

 TDBリースは、モンゴル有数の銀行TDBと日本の会社が出資して、2013年8月に設立された。丸紅のウランバートル事務所長だった藤本和久さんが社長を務めている。

 TDBリースの最初のリース案件は、モンゴルの基幹産業であるカシミア製品の編み機。島精機(本社和歌山市)の機械が「ゴビ」などの会社で使われているが、TDBリースが提案しリースした。

 リースの多くは鉱山用の重機類。モンゴル最大の炭鉱タバントルゴイでは、コマツなど日本製のダンプカー、ショベルカーが使われているが、TDBリースの物件もあるそうだ。モンゴルの航空会社で使われているジェット旅客機の中にも同社のリース物件がある。

 TDBリースは、藤本社長のほか、社員16人の小さな会社だが、リース業としてはモンゴルのパイオニアで最大の企業という。社員の平均年齢は28歳と若い。このうち4人は日本留学組。信州大、東京国際大、中央大、神奈川大の卒業生だ。藤本社長は早大卒で、学生時代はサッカー部で活躍したそうだ。社内の日常会話はモンゴル語だが、仕事では英語と日本語という。

 エルデネオチロさんは、信州大に留学したとき安田財団の奨学金を受給した。2017年3月に卒業、5月に入社した。これまでブラジル製の小型ジェット旅客機を世話したり、タバントルゴイ向けの重機などを担当してきた。

 TDBリースに入社したのは、就活のとき、藤本社長に会って、「人間的な魅力に引き込まれてしまった」と言う。「藤本社長はチャレンジ精神がおう盛です。常に新しいビジネスに目を向けています。現場主義というか、取引先の業務内容を自分で確かめ、担当者の話をしっかりと聞き、汗をかきながら仕事をする。そんな生き方を実践されている方です。私にとっては見習いたい大きな目標になっています」と言う。

 藤本社長は、ブルームバーグ・モンゴリアが選ぶ「2021年モンゴルのベストCEO」に選ばれ、昨年、授賞式が行われた。外国人の受賞は珍しいということで、モンゴルで大きなニュースになった。

 TDBリースは、エルデネオチロさんや同僚のオユカさん(東京国際大卒)が学んだ新モンゴル高校の生徒3人(各学年1人)に奨学金を授与する社会貢献も行っている。

 モンゴルのリース事業は、まだ新しい分野だ。TDBリースは、主に法人向けを扱っている。個人向けに車のリースなどを行う「ハスリース」(ハス銀行のリース部)も大手だが、企業数は少なく、発展の可能性を秘めている。銀行が不動産を担保に融資を行うのに対して、物件そのものを担保にできることから、企業にとっては設備投資のハードルは下がる利点がある。

 ただし法整備などがまだ追いついていない面が課題という。リース法が2006年に制定されたが、改正は進んでいない。債権回収でもめた場合、裁判になるが時間がかかりすぎる。民事調停の制度化などは進んでいるものの「とにかくノウハウが足りない」とエルデネオチロさんは説明する。

 課題はある。しかし、モンゴルは発展中だ。リース業は新しいビジネス分野。そこで日本留学を経験した若者が働いている。エルデネオチロさん、オユカさん、がんばってください。

▽森修 

もり・しゅう 1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。


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