
【写真説明】ホーショールを求めて、次々と訪れる客に対応する留学生たち。看板の裏側では、小麦粉の生地にひき肉を詰めて揚げる作業に奮闘中だ=5月4日、東京・光が丘公園
5月4日と5日、東京の光が丘公園で開かれたモンゴルの春祭り「ハワリンバヤル」に行ってきた。在日モンゴル留学生会とモンゴル好きを自称する日本人が実行委員会を組織して行う催しで、今年で19回目。私は初日を見た。2013年に続き2回目だが、とにかく人が多い。さすが東京だと思うと同時に、モンゴル人気は相当なものだと、あらためて感じた。
「モンゴルの後輩たちの奨学金になります」「モンゴルの家庭料理、ホーショールはいかがですか」
会場の一角で、女子学生が声を張り上げる。ウランバートルの私立校「新モンゴル小中高」の卒業生で日本の大学や高専、日本語学校で学ぶ若者たちが集まった新モンゴル留学生会がテントの屋台を出していた。
ホーショールは、モンゴルの揚げ餃子といった料理。家庭料理であると同時に、ウランバートルのレストランでは、必ずといっていいほどメニューに載っている定番料理だ。
1個250円、2個だと450円。キャベツ、ニンジンのサラダ付きで販売していた。私は2個入りを買った。久しぶりに食べた。うまかった。
新モンゴル留学生会は、在日モンゴル留学生会とは別の組織だが、両方で活動している人もいる。
新モンゴル留学生会の店は、モンゴルの後輩たちに支給する「ウラム(励み)奨学金」を稼ぐために開いた。支給対象は、経済困難な生徒はもちろん、成績優秀者、数学・物理・化学のオリンピックでメダルを取った生徒、ボランティア活動に取り組んだ生徒ら。半年で20人に5000円ずつ支給する。年2回の支給なので、ハワリンバヤルの2日間で20万円を稼がなければならない。
20万円は、あくまでも益金だ。売上金から材料費や出店料などが差し引かれる。1個250円のホーショールで、これだけの益金を稼ぐことはできるのか。ということで、しおりにモンゴル文字で来店者の名前を書いて販売もしていた。
参加した留学生は皆、手弁当だ。横浜国大、東京工大、桜美林大、山梨大、群馬大など首都圏はもちろん、宮崎大、高知大、香川高専、名古屋工大、信州大、新潟大、山形大、秋田大など遠隔地から参加した人も多い。旅費はすべて自分持ち。高知から東京までは、バスで12時間かかるという。飛行機や新幹線、ホテルを利用する経済的な余裕はない。宿泊は友人、知人が頼りだ。
ウラム奨学金は、高校生向けだが、これとは別に、中学生向けの「テムーレル(希望)奨学金」を出している留学生もいる。また日本留学を目指して東京の日本語学校で学ぶ後輩に、「フューチャーファンド」という奨学金を支給したグループもある。
彼ら留学生は日本の奨学金をもらって学んでいる。アルバイトもしている。そんな生活費の中から、後輩たちの奨学金をひねり出している。
▽森修 もり・しゅう
1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。
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