【写真説明】どんな卒論を書いたか、日本で何を学んだかを発表し合う勉強会=2019年3月29日、衆議院第一議員会館
ウランバートル市の新モンゴル高から日本の大学に留学した若者たちの勉強会が3月29日、衆議院第一議員会館で開かれ、大学と大学院を卒業したばかりの16人が卒業論文について発表した。勉強会には、卒業式に臨む息子や娘の晴れ姿を見るため来日した親や後輩留学生、支援する日本人らも含めて約90人が集まり、日本での生活を振り返った。
名古屋大法学部のソドチメグさんは、「モンゴルにおける暴力被害者シェルターの現状と課題」と題して発表した。モンゴルでは、女性の3人に1人が夫やパートナーから身体的性的な暴力を受けているとする調査結果があり、大きな社会問題にもなっている。彼女は、そうした被害者を守るシェルターの現状を日本と比較しながら調べ、法整備も含めて改善策を探った。
ソドチメグさんは、卒業式にはハルハ族の民俗衣装で臨み、2206人の卒業生のうち、成績優秀者に贈られる総長顕彰者7人の1人に選ばれたことが紹介された。
秋田大国際資源学部のハリウンさんは、「小規模鉱山企業と金の零細企業のフォーマル化」(原文は英語)と題する卒論をまとめた。モンゴルでは、ゴビなどで「ニンジャ」と呼ばれる金採掘者が多く、精錬作業での水銀汚染が問題になっている。彼女は、そうした現状を調べて問題点と解決策をまとめた。
ハリウンさんは、卒業式にはブリヤートの民俗衣装で出席し、外国人留学生を代表して答辞を述べた。
信州大農学部のツェンドアユシさんは「乳業用乳酸菌由来オリゴDNAケモカイン誘導能」と題して発表した。日本では乳酸菌が免疫力を高めるとする健康食品が数多く販売されている。モンゴルは乳製品が生活の中に根付いている。彼女は、4月から信大大学院で、乳酸菌に由来するDNAの研究を続ける。「将来、新薬の開発につなげることができれば」と力強く抱負を語った。
桜美林大リベラルアーツ学群日本語教育専攻のツォルモンさんは、町田市周辺の外国人の子どもたちに日本語を教えるボランティア活動の授業を履修した500人の中から「最優秀サービスラーナー」に選ばれたことを報告した。大学から、授業の一環で日本語を教えた初の外国人留学生として認められた。
ツォルモンさんは、今後は新モンゴル小中高のキャリア開発センター職員として卒業生の進路相談など支援活動を行うとともに、後輩たちに日本語を教える。
卒論発表会には、新モンゴル日馬富士学校を創設し理事長を務める元横綱のビャンバドルジさんが訪れ、若者たちを激励した。
モンゴルの「教育テレビ」も取材に来ていた。取材チームを率いるのは新モンゴル高と信州大を卒業したアンフバヤルさん。彼女は、昨年暮れに出産したばかりで目下、産休中だが、かつて自分が経験したことでもあり、「深みのある取材ができるのでは」と会社から打診があり、喜んで引き受けたという。番組は3本を予定している。卒論発表会のほか、私費留学を目指す受験生が千葉県で行っている合宿と、留学生の一日も追う。
▽森修 もり・しゅう
1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。
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