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【写真 大ゴビ特別自然保護区内、バロントーロイの水場で見つけたマザーライの死体=2011年5月21日、筆者撮影


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【写真◆曠張.ーンボルガスのオアシスにあるトーロイの木。手前の地面のくぼみはマザーライが昼寝した跡

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【写真】シャルフス山ろく水場近くに設置されているマザーライ用の給餌場

 

 毎年5月、東京都練馬区光が丘公園で開かれる「ハワリンバヤル(春祭り)」の今年のテーマは「マザーライ」だという。

マザーライは、日本語ではゴビヒグマまたはゴビグマと呼ばれ、中国との国境付近のゴビアルタイ県とバヤホンゴル県にまたがる地域に生息している。20〜30頭ぐらいに生息数を減らし、絶滅の危機にあることから、モンゴル政府が一帯を特別自然保護区にして、狩猟や遊牧を禁止するなどの保護策を講じている。

私は、2011年5月、日本ツキノワグマ研究所(広島県廿日市市)を主宰するクマ研究家の米田一彦さんの調査に同行して特別保護区を廻った

特別保護区に立ち入るには、ゴビアルタイ県バヤントーロイ(豊かなトーロイ)の管理事務所(環境観光省の出先)で手続きが必要だ。ここまでウランバートルから車で2日かかる。事務所の敷地内にある来客用ゲルに泊まり、翌朝、事務所職員の案内で保護区に入った。

保護区には、必ず車2台で立ち入る。道なき道を進むので、万が一を考えてのことだ。ガソリンは満タンにするのはもちろん、予備タンクは外付けのもののほかに座席の後部にも携行する。車内はガソリンの臭いで頭が痛くなるほどだった。保護区内は場所によっては無線も通じない。立ち入るのは命懸けだ。

管理事務所を出発し、8時間ほど車を走らせて夕方、バロントーロイ(西のトーロイ)の水場に着いたところで、いきなりマザーライの死体を見つけた。病死とみられるが、死後それほど時間が経過していないようで、眼は深緑色をしていた。

生きている野生のクマを見るのは簡単ではない。しかし、米田さんによると、自然したクマを見るのは、もっと難しいという。

付近を警戒しながら歩いていたら、今度は野生のラクダ「ハブトガイ」の死体を見つけた。過酷な自然の現状を目の当たりにした思いだった。これから何が起きるのか。そんな不安もよぎった。死んだマザーライに遭遇したのは幸運だったかもしれない。しかし、私は複雑な気分だった。

(マザーライについて詳しくは拙著「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」第5章「ゴビ砂漠のクマ」をご覧ください)

▽森修 もり・しゅう 


1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。







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