
【携行食のこと】
テムジンとボオルチュは薄栗毛の去勢馬の蹄のあとをつけ、三晩の野宿をかさねた。
(中略)
馬乳酒とボルツという携帯食で腹ごしらえをして、ひたすら先を急いだ。
(中略)
ボルツというのは、牛の赤身を二年かけて冷凍乾燥させ、金槌で砕き、臼で挽いてこまかい糸屑のようにする。それを牛の膀胱に詰めこんだもので、一頭分の赤身の肉が入る。それは騎兵十人の半月分の食糧になった。湯で戻せば、肉の分量はおどろくほど増える。
(津本陽『草原の覇王 チンギス・ハーン』PHP文芸文庫, 2011, P51)
これは、のちにモンゴルのチンギス・ハーンとなるテムジン少年が、馬泥棒を追跡した時のエピソードだ。
ボルツは、いまでも食べられている。
引用した内容ほどに手間をかけないでも、カチコチの干し肉は手軽に買える。
砕いて湯で戻し、その出汁で米やうどんを煮込めば、日ごろの食事にも充分だ。
以前モンゴルで、ペットボトルに米と水を一緒にいれて持ち歩いているという日本人カメラマンに出会った。
名付けて「水米(みずごめ)」。
ふやけているので、そのままでも食べれるらしい。
奇習だ…と思っていたが、最近テレビ番組で、料理研究家の土井善晴さんが
「米の保存に、水に浸けておくのはアリだ」
と話していた。
密封すれば、悪くならないそうだ。
モンゴルを長旅しようとする時。
どんな食べものをどう持ち運ぼうかと考えた時
「水米 × ボルツ」
というのはアリだなと、モンゴル飯を食いながらふと思った。
モンゴル旅行体験談寄稿 大道 卓矢
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