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チャガンイデー、オラーンイデーと同じく、モンゴル飲食文化の中で酒も重要な位置を占めています。旅行でモンゴルに来たとき、初対面のモンゴル人と食事をするとき、いずれも酒のもてなし(洗礼?)を受けることになります。避けて通ることはできません。

●モンゴル人も苦しい
米、こうりゃん、麦などからつくる、アルコール度数の高い酒をモンゴル語で「黒い酒」と言います(他に馬乳を原料とする酒もありますがここでは触れないことにし、以下「酒」という場合はこの「黒い酒」のことを指します)。「黒い」といっても色自体は透明で本当に黒い色をしている訳ではなく、ここでは「純粋な」という意味です。アルコール度数は低いもので40度程度、高いものだと60度以上のものもあり、この「純度の高さ」を指しているのです。

ここで少々脱線し、モンゴル人の色に対する考え方を紹介します。
まず「白」は最も神聖な色とされています。例えば旧暦のお正月をモンゴル語で「チャガンサル」(白い月)と言います(2005 年のチャガンサルは内モンゴルでは2 月9 日です)し、また儀式などの際に使われる「ハタグ」という絹も純白です(ちなみに、古代シャーマニズムの天の崇拝を起源とする青いハタグもありますが、白い方がよく見られます)。上述したチャガンイデーが飲食において重要な役割を担っていること、また「五畜」の中で肉を最もよく食べる羊の毛が白であることなどが主な理由ではないかと思います。

逆に、黒は良い色とは思われません。水は時に「黒い水」と呼ばれます。この時はいい意味はありません。ですから、お客さんにスーテー茶でなく水を出す時は、最初にお碗に牛乳を数滴たらしてから水を注ぎます。また、上述した「夜チャガンイデーを外に持ち出してはいけない」というタブーは「神聖な白が暗闇の黒で汚される」という考えが根底にあるからではないでしょうか。

酒は決して悪いものではなく、むしろ縁起の良い物なのですが、それを「黒い」と言い表すのはおもしろいと思います。

酒の話に戻りましょう。
モンゴル人は、この強烈な酒をストレートで飲みます。割り物はありません。よく飲まれるのは最低の38度の酒ですが、これでもじゅうぶん強烈で、また独特の匂いもあります。飲み慣れない人はとてもではありませんが「おいしく飲む」という訳にはいかないでしょう。

以前、中国語の先生(モンゴル族)が留学生を昼食に招待してくれた時、当然のことながらこの黒い酒が出てきたのですが、実はこの先生、酒は好きではなかったのです。でも「大勢で食事をする時に酒がないのはもの足りない」ということで、誰に強要された訳でもないのに苦しそうな顔をして飲んでいたのが印象的で忘れられません。

酒もチャガンイデーと同じく贈り物として用いられますが、いつ、誰にでも贈って良いチャガンイデーとは少々違い、酒は「正式」というか「固い」というような感じがあるようで、一般的に年下の人に贈ることはありません。

ちなみに、相手が酒を飲めるかどうかは関係ありません。「酒を贈る」ということ自体に尊敬の念がこめられているのです。

以前、遊牧民のゲルを訪ねた時に酒を手土産として持って行ったという例を見たことがありました。草原ツアーなどでゲル訪問をなさる時は参考にされると良いでしょう。
 
【寄稿者プロフィール】
田中英和
中国語・モンゴル語講師、モリンホールの演奏・講師など。

ミラクル・ジャーニー わが子を癒したモンゴル馬上の旅
ルパート アイザックソン
早川書房
2010-04-09

 
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