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家畜の乳、およびそれを加工した物をすべてひっくるめて「白い食べ物」と言います。


「食べ物」と言っても液状の物も含めます。モンゴルでは馬、牛、羊、ヤギ、ラクダを「五畜」と言いますが、この五畜すべての乳を使用し、硬い物から液状の物、酸味の強い物や弱い物、油、乳酒まで30 種類以上の形・味のチャガンイデーを作り出します。

それらの違いは基本的に製法の違いによるので、実際にその製造過程を見ないととてもではありませんが覚えきれません(余談になりますが、家畜についても年齢や性別、色などなどによって固有の呼び方があります。これも覚えられません)。

●お茶を「食べる」
例として、牛乳を使ったモンゴルを代表するお茶「スーテー茶」について紹介しようと思います。「スー」は「牛乳」、「テー」は「ある」という意味で、つまり「スーテー茶」とは「牛乳入りのお茶」という意味になります。日本のみそ汁みたいな位置付けで家庭によって違いはありますが、基本的に以下の手順で作ります。
  1. レンガ茶(レンガ状に固めたお茶)を鍋に入れ煮る。
  2. アワを乳から作った油で炒め、レンガ茶を入れる。
  3. 牛乳と塩を入れ、よく混ぜて出来上がり。
スーテー茶はよく日本語で「ミルク茶」と訳されますが、このように油や塩も入っていて、一般にイメージされる「お茶」とは似ても似つかぬシロモノです。だから「ミルク茶」と聞いてミルクティーのようなものを想像した人が、まず油が浮いているのを見てびっくりし、飲んだらしょっぱくてまたびっくりした、という話は非常によく耳にします。
ちなみに2〜3回飲めば味に慣れるようで、「どうしても飲めない」という声は聞いたことがありません。中には「一時帰国中スーテー茶の味が恋しくなった」という人もいました。では、このスーテー茶とモンゴル人は生活においてどのようなかかわりを持っているのでしょうか。
 
まず言ってしまうと、このスーテー茶はモンゴル人の間では主食の一種なのです。
今でこそ都市生活をするモンゴル人も多くなり、いろいろな食べ物を簡単に入手できるようになって食生活は大きく変わりましたが、草原で遊牧生活を送っている遊牧社会においては、今も重要な食事という位置にあります。つまり、朝スーテー茶を飲んで出勤(ここでは家畜の放牧などのことです)し、昼もスーテー茶。夕食になり、ようやく少量の肉や穀物などを食べるという生活です。
 
ただ、実際にはスーテー茶だけ飲むというのはまれで、チーズなどの食べ物、油、「モンゴルアム」という名のきびに似た食べ物、小麦粉で作った「ボールソグ」などをお茶の中に入れて一緒に食べます。みそ汁にご飯やおかずを全部入れてまとめて食べるといった感じでしょうか。
 
これだけではお腹はとても満足するとは思えませんが、モンゴル国の留学生は実際、朝はお茶を飲むだけですませていますし、また約800年前のモンゴル帝国時代、遠征の際にはホロードという牛乳から作ったチーズのような食べ物を水と一緒に水筒に入れて溶かし、それを主食としていたのです。もちろん他の物は全く口にしなかったという訳ではなく、2〜3日に1回は食事をしたり、また狩りなどをしてその肉も食べていたそうですが、それにしてもこんな「食事」とも呼べない食事であの巨大なモンゴル帝国をつくってしまったのだからおそれ入ります。

 ⇒ 続き  モンゴルの食文化(3)

世界の食文化 (3) モンゴル
石毛 直道
農山漁村文化協会
2005-06