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【写真説明】子どもを暴力から守る「魔法の城」。ウランバートル市の北部、ゲル地区にある。本来、行政が行うべき施策を民間のボランティアがカバーしていると評価されている

  

 ウランバートルのゲル地区に「魔法の城」という家庭内暴力や児童虐待の被害に遭った子どもを預かって守る民間施設がある。私は、新モンゴル高と高知大を卒業して同施設の運営に当たるテルメンさんに案内してもらい見てきた。

 魔法の城は、モンゴルの若者4人が2013年に「金づちのアラーム」というNGOを設立したことに始まる。テルメンさんは2015年に高知大を卒業して帰国し、ウランバートルでケーキ店を経営しながら、このNGOに加わり、ボランティアとして活動している。

 魔法の城は2017年春に完成した。約2200平方メートルの敷地を国から買い取り、保護施設、コミュニティー施設、ゲル付きの遊び場、家庭菜園用のビニールハウス、運動場などを備えている。施設内では有料の保育園(定員50)も併設している。

 建設費は民間の募金や寄附でまかなった。国の補助金などはない。保育園の月謝は2万トゥグルグ。ほかの一般施設は10万トゥグルグぐらいなので「安く設定している」とテルメンさんは説明する。全体の運営費は、ほとんど寄付金でまかなっている。

 私が知り合いのモンゴル人に「魔法の城をどう思うか」を聞いたところ「本来、行政がやるべき仕事を民間が行っているところがすごい」と評価する声が多かった。

 魔法の城は2カ所目を開設する予定で、この春にも着工の予定という。

 テルメンさんの高校の後輩で名古屋大法学部4年のソドチメグさんは、このほど卒業論文「モンゴルにおける暴力被害者シェルターの現状と課題―日本との比較の視点から」を仕上げた。

 論文によると、モンゴルでは、2004年に家庭内暴力防止法が制定されたが、被害者への支援はまだまだで、シェルター不足が問題になっている。そもそも実態調査が始まったのは2008年からであり、警察白書に家庭内暴力の件数が登場するのは2018年からだ。

 論文によると、暴力に対して3日間の滞在が認められるワンストップ・サービスの施設はウランバートルに4カ所、地方に4カ所ある。一時的な保護先となるシェルターはウランバートルに民間団体・暴力防止センターが運営するものが1カ所、警察署に付属するものが2カ所、地方にも民間施設が3カ所ある。

 しかし、ソドチメグさんは、.轡Д襯拭爾亮詑屬楼貉避難であり自立に向けたサービスまでは受けられない¬唄屬鵬疆戮飽預犬靴討り外国からの支援にも頼りすぎている―と指摘する。

 論文で扱っているのは大人の女性への暴力だ。母親が子連れで避難する事例は含まれるものの、魔法の城のような、子どもへの暴力問題は触れていない。ソドチメグさんは「次は、魔法の城のような、子どもへの暴力に対応している実態を調べたい」と私へのメールで話している。

 魔法の城の屋上には、ソーラーフロンティア(本社東京)の太陽光パネルが設置してある。テルメンさんによると、電気代が高いので、維持費を節約するため設置したという。魔法の城は、ボランティアで運営されている民間の福祉施設なのに、電気料金は営利を目的とした施設と同じなのだという。

 そこでテルメンさんは、高校の先輩でソーラーフロンティアの日本人社員と結婚した女性(岩手大卒)に相談した。同社は、魔法の城の実情に理解を示し、太陽光発電の設備を無償提供してくれた。

  

▽森修 もり・しゅう 

1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。