IMG_9200

【写真説明】

左は、新モンゴル小中高の小学校3年生向け音楽教科書の表紙。右は、そのうちリコーダー演奏を目指す項目の1ページ

  

 モンゴルに日本の教科書を参考にした全く新しい音楽の教科書が出来た。作ったのは新モンゴル小中高(ウランバートル市)の音楽教師エンフジャルガルさん。

 彼女は2008年に新モンゴル小中高の教員になったが、学校の図書室で日本の教科書を見つけて読んだら「とてもわかりやすいと思った」と言う。日本語は、それまで独学していたので内容は理解できた。

 モンゴルの音楽の授業は、みんなで歌をうたうことが中心で、五線譜を読みながら歌ったり楽器を演奏することは、あまりないのだという。

 「モンゴルに日本の教科書のようなものがほしい」と思ったエンフジャルガルさんは、2012年、桜美林大学(東京都町田市)に短期留学した機会をとらえ、日本の教科書を集めた。新モンゴル高の元教員で千葉大大学院に留学していた友人に協力してもらった。

 帰国後、モンゴルと日本の教科書が、どう違うのかの分析を開始し、論文にまとめた。2014年から4年をかけ、1年生から9年生まで(小学校5年分と中学校4年分)の各学年ごとに調べた。

並行して、リコーダーを実際に演奏する授業も始めた。モンゴルでは「楽器」という教科書はあるが、楽器を説明するだけで、実際に演奏してみる授業は行われていなかったという。

 楽器を使った授業は、今のところリコーダーだけだ。「本当は鍵盤楽器を演奏させたいのですが、楽器が足りません」とエンフジャルガルさんは言う。もっとも彼女が作った教科書にはピアニカの項目は入れてある。

 教科書は2016年から印刷を始め、昨年12月、5年生向けのものが完成した。モンゴルの小学校は5年制なので、これで小学校の全学年分はそろった。これからは69年生(中学14年生)向けの教科書作りを目指している。

 出来上がった教科書は、カラーのイラストや写真がいっぱいあり、子ども向けの絵本のようでもある。生徒が音楽に親しみやすいように編集していることが分かる。知り合いの何人かのモンゴル人に聞いたら「これまでにない教科書。すばらしい」と評価する声ばかりだった。

 独自の教科書は、昨年開校した日馬富士学校でも使われている。目下、ほかの学校にも採用を呼び掛けている。

 モンゴルの音楽というとホーミー(喉歌)や馬頭琴などの民俗音楽を連想する人が多いかもしれない。民謡のオルティンドーは、長く伸ばす節回しが、南部牛追い唄とか宮城長持ち唄など日本の民謡に似ていると思う。日本人の耳に、なじみやすいのではないか。

しかし、純粋なクラシツク音楽や日本の演歌・歌謡曲調のものもある。ロックバンドも多い。先日、「モンゴル速報」で見た日刊スポーツの記事によると、モンゴル相撲協会が25周年を記念して、今度は音楽で日本とモンゴルの文化交流を目指しているそうだ。

モンゴルの音楽が、もっと日本人に親しまれるようになってほしい。いや世界中の人々に親しまれるものになると私は信じている。そんな暁、作曲者や演奏者から「モンゴルの教科書は日本式だからね。とても分かりやすい。それで音楽が好きになったんだよ」なんて感想が漏れるのではないか―と勝手に想像が膨らんでしまう。

   

▽森修 もり・しゅう 

1950年、仙台市生まれ。元河北新報記者。1998年、山形市で勤務していたとき、たまたま入ったバーでアルバイトしていたモンゴル人の留学生と出会う。以来、モンゴルの魅力に取りつかれ、2005年「モンゴルの日本式高校」、2012年「あんだいつまでも新モンゴル高校と日本」をそれぞれ自費出版。


全身全霊 第70代横綱、18年間のけじめ 日馬富士公平
日馬富士 公平
ベースボール・マガジン社
2018-09-27


このエントリーをはてなブックマークに追加